Vol.6に引き続いて「信行道場」のお話を書きたいと思います。
「信行道場」では、班ごとの完全な団体生活で物事が進められます。各種のお当番もすべて、班ごとに回ってくるのです。今回の女性の道場の場合、4班しかないので基本的にはいつでも何らかのお役目があることになります。私の所属した班は6人構成でした。年齢も出身地も経歴もさまざま。それぞれに得意分野もあれば不得意分野もあります。教義に強い方もいらっしゃれば、お作法やお経をよくご存知の方、とにかく健康な方、ムードメーカー、恐ろしく行動が敏捷な方、・・・といった感じ。この6人でそれぞれの得意分野を生かしながら助け合って、日々過ごしてゆきます。無駄話はできませんが、コミュニケーションは大切。日々が過ぎていく中でどんどんチームワークが良くなっていきます。
こう書くとまるで殺伐とした日々を送っているようですが、きちんと食事をし、睡眠も取っています。そんなに時間が貴重ならば睡眠時間を削って自分の時間を確保するの?とも思われそうですが、「食べるのも修行、眠るのも修行」とは何度も言われたことです。
食事は精進食でした。お料理を作って下さる方が、修行が無事進むようにと色々考えてくださり、毎日手作りで心のこもった美味しいお料理を準備してくださいました。このお食事を残すことなくいただくこともまた、修行の一つなのです。ちなみに、食の良い私は、お箸の進まない方のお食事を嬉々としてお手伝い(?)させていただくこともしばしばでありました。
きちんと食べきちんと眠って新たな日への英気を養う・・・単純なことではありますが、その繰り返しです。そのパワーをもって、係ともなれば下駄で全力疾走することもしばしばです。なぜ全力疾走するのか?それは他の方よりも先にお堂などに到着してロウソクの火を灯したりお線香を準備したりするためです。それはひいては、人のために何ができるか、ということにつながってゆきます。目指すところはそこなのです。
「利他(りた)」という言葉があります。「他を利する」―他人のために働くという意味です。自分のためだけではなく他人の幸せのためにも働くこと、それが日本の仏教である大乗仏教の精神ですが、それを率先しておこなうのがお坊さんの役割です。そこが根幹なので、お経があげられるというのはそのうちの一つといえます。生き方そのものがお坊さん、ということなのです。
そう感じていただけるように、私たちは日々自分を磨いていかなければなりません。「信行道場」が終わってお坊さんになったから修行は終わり、なのではなく、一生涯修行なのです。
今のこの引き締まった気持ちを忘れずにこの先も過ごしていきたいと思います。
ところで、僧侶になるにあたり僧名へ改名を行いました。僧名は音読みが用いられ、新たな名前は「慧香(えこう)」と申します。師僧に付けていただきました。「慧」の字には仏さまの智慧(叡智)や悟りという意味が、「香」には仏さまのおごそかさがそこはかとなく漂うさまという意味それぞれが込められております。気恥ずかしいような名前ですが、この先の人生をこの名前とともに過ごしていく所存です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
「お坊さんへの道」シリーズ、今回で終了いたします。
ここまでお読みくださり、どうも有難うございました。(慧香)